昨今、フリマアプリなどの利用が広く浸透し、中古のブランドバッグや衣料、時計など高価な品物をオンラインで購入する人も増えています。また、資源価格の上昇や円安の進行から一次流通の定価が上昇し続けていることなどを背景に、ブランドリユース市場は、2022年の3,062億円から2030年には4,200億円規模にまでマーケットが拡大するとも予測されています。
出典:リユース市場データブック2023(リフォーム産業新聞社)
楽天ラクマは、拡大するブランドリユース市場でお客様に安心して取引いただける環境づくりを目的に、KOMEHYOと業務提携し、創業から77年で培われたプロの鑑定士によるブランド品の検品とAI活用による「ラクマ鑑定サービス」を提供。
今回は、実際の検品業務にもあたるKOMEHYO営業企画統括本部KOMEHYOカンテイ事業部次長の松波 之浩さんに、業務の流れや利用のポイントなどをお聞きしました。
ブランド品の偽造品・模倣品が流通する背景

——偽造品・模造品がどんどん精巧になっていると聞いています。トラブルに巻き込まれないためのリスク管理は難しくなったとお感じでしょうか?
松波 之浩さん(以下、松波):精巧な偽造品が流通されており、リスク管理は間違いなく難しくなっています。以前なら一目で偽造品だとわかるケースが多かったのですが。
最近ではブランド中古品の流通量が年々増えて、物によっては買った商品が定価以上に売れることも珍しくないほど、中古品の価値が高まっています。その結果、リユース市場にて高値での取引や買取に出すことを目的に、精巧な技術によって作られた見破られにくい偽造品も増えてきました。
——プロの目で検品された商品であれば安心だと思いますが、様々な流通経路がある中で偽物だと知らずに購入してしまうケースもありそうですね。このとき購入者が罪に問われるリスクはあるのでしょうか。
松波:偽造品だと気づかず購入したことだけで、犯罪になるわけではありません。ただし、偽造品の製造や販売は、知的財産権を侵害する違法行為なので、たとえ偽造品だということを知らなくても、購入することが違法行為に加担することになるという点は知っておく必要があると思います。
——ラクマでも偽造品・レプリカ・模倣品などの出品は固く禁じられていますが「気づかずに」購入または出品するリスクを回避する方法はありますか。
松波:本来は信頼できる場所で、信頼できる相手から購入することが原則だと思います。店舗に行けば、売り手とのコミュニケーションが取れますし、その企業の評判を調べることもできます。
ただし、フリマアプリのようなCtoC(買取業者を介さない個人間での売買)では、互いの顔が見えづらいですよね。商品も実物が見られず写真情報で判断することになりますし。そこで、プロの目を介したうえで「問題なし」と判定することで安心して取引していただこうと考えているのが私たちの取り組みです。
KOMEHYOが取り組む「偽物シャットアウト」とは

——KOMEHYOが偽造品を取り扱わないためにどのような工夫をしているかをお聞かせください。
松波:安心・安全なリユース市場をつくることも当社の役割と思っています。ブランド本来の価値を脅かすような偽物の流通は徹底して排除しなければなりません。業界全体で不正な商品を扱わないように、同業24社で一般社団法人 日本流通自主管理協会(AACD)を立ち上げたのは1998年、それぐらい偽造品への課題意識は強く、地道な努力を続けてきたのです。
もちろん当社でも自らの目利きを高めるためのさまざまな取り組みを追求してきました。
——取り組みを具体的に教えていただけますか。
松波:個人のお客様から店舗に持ち込まれた商品は、店頭の鑑定士がしっかりと査定したのちに買い取られ、愛知県の商品センターへと送られます。全国から商品が集結し、年間取扱点数は、170万点以上。すべて商品情報をデータベースにまとめています。
これら商品情報のデータベース作りに役立てられ、AIテックなどでも使用されるほか、全国の店舗からアクセスできるようになっています。ブランド品を中心に日々登場する新作のモデルや型番、サイズなど膨大な情報をアップデートすることが、偽造品の流通を防止するためには必要不可欠です。
——買い取りを担当する店舗の鑑定力はどのように培われるのですか?
松波:まず各店舗で買い取りを担当するには、独自の研修カリキュラムの受講と試験に合格することが必須です。また、認定に加えて店舗の鑑定士は、新製品や偽物の情報交換会、勉強会を定期的に受講して、自らの見抜く力を高めています。
さらに、商品センターでチェックを行う鑑定士は、社内でも知識と経験が豊富なスタッフが担当しています。彼らの中には、先述のAACDが主催する協会基準判定士の資格を取得する者も在籍しており、より高度な知識を持っているため、偽物が紛れ込むのを防ぐ役割を担っています。
商品によっては、修理・メンテナンス後に各店舗へ発送されますが、出荷前にも熟練度の高いスペシャリストが最終チェックを行います。ここまで偽物が入ってきても、一点も見逃がさず店舗へは出荷させない体制を整えています。
「ラクマ鑑定サービス」はKOMEHYOの鑑定士が判定

——「ラクマ鑑定サービス」の流れ、通常のKOMEHYOが買い取る商品との違いを解説していただけますか。
松波:「ラクマ鑑定サービス」は、ユーザー(購入者さま)が楽天ラクマで購入したブランド商品を鑑定に依頼したい場合に、KOMEHYOの検品を受けられるサービスです。ブランドバッグ、衣料、時計、ブランドジュエリーなどが対象で、購入者さまは鑑定拠点までの送料のみご負担いただければ、サービス利用は無料です。
ご提供する検品の品質は、KOMEHYOのクオリティそのものです。KOMEHYOとして取り扱える商品として「基準内」か、「基準外」「判定不能」なのかをお伝えします。
——検品は1品ずつ手作業で行われるのでしょうか。
松波:「ラクマ鑑定サービス」専属のチーム6名体制で、1品ずつ検品にあたっています。現在は5年以上の実務経験を積んだ専門の鑑定士が、例えば金具の刻印や縫製の縫い幅など、各ブランド固有の特徴を的確に確認します。見た目、手触りの確認はもちろん商品のにおいも嗅ぎ、感覚をフル活用して業務にあたっています。
一方で、商品によってはAIによる診断も参考にして最終的な判定を行います。熟練した人間の目利きと、AIなどの最新テクノロジーの組み合わせは当社の強みといっていいでしょう。
「基準内」と判定された商品は、依頼された購入者さまのもとに当社から発送します。基準外の場合、および品物の状態や付属品がないために「判定不能」となる場合は「楽天ラクマ」から出品者さまに商品が返送されます。「基準外」と判定された商品の取引はキャンセルされ、商品代金が購入者さまのもとに返金されます。

——「基準内」、「基準外」など、判定の理由は明かされるのでしょうか。
松波:精巧な偽造品が製造されることに繋がる可能性あるため、申し訳ございませんが、どのような結果でも、判定理由については一切お答えできません。また真贋を判定するものではなく、あくまでもKOMEHYO独自の基準での判定だという点はご了承いただけたらと思います。
購入した方が、判定を受けてみたいと感じたときに利用していただくサービスとご理解いただくと良いでしょう。ただし、「取引評価」を済ませたあとは「ラクマ鑑定サービス」の利用はできませんので、ご注意ください。
「楽天ラクマ」の利用者にも安心・安全な環境を届けたい

——KOMEHYOにとって「ラクマ鑑定サービス」に取り組む意義をどのように捉えていますか?
松波:KOMEHYOにとって、当社以外のサービスで検品を行う試み自体が初めてです。先ほどもお話ししたように、当社自身が目利き力を高めて、偽物をシャットアウトするために進化を続けていかなければなりません。
ただ、これだけリユース市場が大きくなると、KOMEHYOが関与できない領域も広がっています。だからこそ、業界をリードする牽引者として流通市場全体の健全化を目指すことも当社の役割の一つだと考えています。
特にCtoCの取引では、プロの目利きが受けられることは購入者さまの安心材料の一つになると思っています。
——まだ始まってからそれほど時間が経過していませんが、成果や手応えがあれば教えていただけますでしょうか。
松波:「ラクマ鑑定サービス」を試験的に行っていた時期と比べて「基準外」の割合が下がってきています。弊社の検品の基準は変わっていませんので、もし、ラクマ鑑定サービスの存在が偽造品取引の抑止力になっているなら嬉しいですよね。
——松波さんはじめ、専属の鑑定士さんも、やりがいを感じられているとお聞きしました。
松波:それはもちろんです。私たちにとっても新鮮な仕事で、一同モチベーションは高いですね。目利きを行うための能力を高める最大のコツは、とにかく多くの商品を見ることだと思っています。そのため、当社以外で取引される商品に触れる機会は、鑑定士にとって絶好の成長の機会になるでしょう。
また「ラクマ鑑定サービス」は、当社で販売される商品と異なり、値付けすることはありません。したがって品物だけに集中する業務も初心に帰るような気持ちになります。
——「ラクマ鑑定サービス」を利用したことのない方にもメッセージをお願いできますか。
松波:中古品に興味はあっても「少し心配」という方もいらっしゃるかもしれません。たしかに画像だけではわからないこともあるでしょうし、最初にお伝えしたように偽造品は巧妙化しています。だからこそ、プロの目利きを活用してください。鑑定士による「目利き」と「AI」などのテクノロジーを使うことで、みなさまの安心を守ります。
リユース市場全体の安全性が向上すれば、より商品が循環するサステナブルな社会にもつながるはずですね。
——貴重なお話をありがとうございました。
インタビューの後半では、良質なブランド品購入のポイントをお聞きします。鑑定士がどのように腕を磨いているのか、仕事の魅力にも迫ります。